キャリアの隠れ家
第18回 セカンドキャリアの隠れ家、「ギャラリーウスイ」
私よりも2年先輩で、2年ほど前定年で会社を辞め、念願のギャラリーをオープンした人がいる。場所は、長野市内西尾張部交差点の東側へ100mほど。ご自分の名前を冠したそのギャラリーは、倉庫として使われて建物をおしゃれに改装したもので、初期投資や毎月の家賃だけでも、大きな出費のはずだが、そんなことはおくびにも出さず、淡々と「ギャラリーオーナー」というセカンドキャリアを楽しんでいる。
先日お邪魔した日は、たまたま、私の住まいの近くにアトリエを構えているという作家の個展が開かれていた。長野周辺の山川の風景を丁寧に、やさしいまなざしで描かれている水彩画で、とても癒された。
居合わせた画家と、「ウスイ」さんとのお茶のみ話に、時を忘れた。個展の主は、会社を辞めてから画業を本格化し、毎年30枚ほどの作品を仕上げているそうだ。
外見的にはとても控えめなお人柄とお見受けしたが、掲げられている30枚もの作品一つ一つが、心の豊饒を物語っている。今流行の言葉でいえば、これこそが、「人間力」なのだと思う。
さて、「ウスイ」さんとの出逢いは、もう30年も前になる。当時彼は、県外の支社を任されていて、初めてお会いした際、握手を求められた。握手をするという習慣になれていなかった私には、そのあか抜けた振る舞いが印象に残った。
15年ほど前、営業拠点の開設を任された私に、善光寺から、「商売繁盛」のお札をもらってきてくれた。2年前のギャラリー開業の際には、そのお返しをさせていただいた。
セカンドキャリアの選び方にも、その人の生き様が現れるように思う。ギャラリーオーナーを選択した「ウスイ」さんのセカンドキャリアには、純粋な「青雲の志」が生き続けている。
平成22年7月