キャリアの隠れ家

キャリアの隠れ家

第68回 最近の若者は、あきらめが早いといわれている。未来の夢や目標が見つけにくいからなのかもしれないが、最後まで、頑張り続けてほしいと思い、高校生にそんな話をさせていただいた。



  昨年師走に入り、県内の某高校で、進路講話をさせていただいた。寒い体育館で、1時間弱、私の話を聞いてくれた高校生たちに、少しでも響いた話ができただろうか?その時の内容を印刷物にして、再度読み直してほしい、そして、家庭にも持ち帰らせたいとの主催者のご要望で、写真のような印刷物にした。

ここでは、その原稿を再録させていただく。

 ●自己紹介から

  こんにちは、ご紹介いただいたNPO法人夢のデザイン塾の松井といいます。よろしくお願いをいたします。最初に、ちょっと自己紹介をさせていただきますね。みなさん、NPOって、聞いたことがありますか?「Non Profit Organization」の頭文字の略で、日本語に直すと「特定非営利活動法人」、つまり、営利だけを目的としないで、社会貢献を目指して、いろいろ活動しようという組織です。私が事務局長をしている「夢のデザイン塾」というNPOは、若者の進路支援や転職する方々の支援をしたい人たちと一緒に設立したもので、キャリアコンサルタントや産業カウンセラーの資格を持っている人たちの集まりです。仕事は、今日のように高校や大学から進学や就職の講話のご依頼があり、講師としてお話をしたり、ハローワークの転職の講座でお話をしたり、そんな活動をしています。

 今日は、皆さんの進学や就職について、全体の心構えや知っておいてほしいことなどを、お話させていただきます。

 ●進路選択の考え方は?

   皆さんはこれからの将来について、多分漠然とした不安を持っていることだろうと思います。どんな大学に進学しようか?あるいは、どんな会社に就職しようか?いろいろ迷いもあると思います。そんな時は、遠慮しないで、どんどん周りの大人たちに相談したり、質問してください。ご両親は、皆さんにとって一番身近な大人ですよね。そして、皆さんの長所も短所も、一番知っている存在です。「可愛いわが子」だから、きびしいことも言うかもしれませんが、まずは、しっかりと受け止めることが大事ですね。学校の先輩や知り合いの人たちから、情報をいただくことも大事です。もちろん、先生方にも、どんどん相談すること。そうすることで、考えていく上でのヒントや気づきが、きっと生まれてきます。

  そしてこれが一番大事なことですが、最後は、自分で決めるようにしてください。自分で決めたことなら、あとあと後悔も少ないと思います。「親に言われたから、、」とか、「先生に言われたから、、」とか、で決めると、「もっとこうすればよかった」と、いうことになりがちですから。

 ●進学に迷ったら!?

   これからは、進学を考えている方へのアドバイスをしますね。誰でも、好きな科目と苦手な科目があるものです。そして、国語や英語が好きだから、文系にしようとか。逆に、数学や理科が得意だから理系にしようという考え方になりますね。そして、文系にしたから、もう数学の勉強はあまりしなくてもいい。理系にしたから、国語の勉強は手を抜くと、考えてしまいがちです。そういう考え方は、ただ進学だけを考えているわけですが、大学の3年生からは、就職活動をするようになります。就職活動の試験は、だいたい高校2年生程度の数学や国語や英語もでるんですよ。私は、理系の大学生の就職相談にものっているのですが、彼らの悩みを聞くと、高校生の時に、もっと国語の勉強をしておけばよかった、という話がでてきます。もちろん、逆もありますよね。会社に入れば、高校生程度の知識が最低限必要になりますから、たとえ、文系や理系に絞ったとしても、苦手な科目も、しっかりと取り組む気持ちを持ち続けてくださいね。

  ここからは、短大や専門学校に進むことを考えている人へのアドバイスです。大学は、4年間勉強するのですが、短大や専門学校は、2年間と短いです。2年間で卒業して、仕事につくということは、4年間で就職する大学生よりも、倍の勉強をしなければいけないわけです。たとえば看護師や保育士の資格をとるにしても、大学では、4年間の勉強ですが、短大や専門学校は、2年間で資格をとるための勉強が必要ですから、たいへんなのです。それを覚悟していくとしたら、とても充実した2年間になりますね。

 ●就職に迷ったら!?

   進学せずに、就職を考えている方にも、いくつか、アドバイスしますね。自分がどんな仕事にむいているのか、どんな会社に入りたいのか、これから考えていくわけですが、その前にやってほしいことがあります。それは、自分の長所を自覚することです。好きなことは何だろ?得意なこと、上手にできることは何だろう?を、考えてください。もちろん人間には、長所だけではなく、短所もありますね。それも、素直に考えてみること。ただし、短所は実は長所にもなる。逆に長所が短所にも変わるということもあるんですよ。たとえば、飽きっぽいという性格は、普通に考えれば、短所になるのですが、裏返してみると、いろいろなことに関心がある、いろいろなことをやってみたいと思っている、ということでもあるのです。つまり、好奇心が旺盛、気持ちの切り替えが早い、ということなのです。

  それから、自分の目標や夢も持ち、それを説明できる用意をしていってください。当面は、勉強の成績や部活のことでもいいでしょうし、さらに、少しずつでも、自分のしたい仕事について、考えていきましょう。また、実際に就職したら、お金をためて海外旅行にいくとか、趣味を楽しむとか、いろいろな夢をもつことが大事です。就職活動では、面接がありますが、面接では必ず、「あなたの目標や夢は何ですか?」という質問がでます。その時に、どうどうと自分の夢を語れることが、合格の条件になるといっても過言ではありません。

  もう一つお話したいのは、会社選びや仕事選びの時、岡谷や諏訪、つまり皆さんの地元のことに関心を持つこと、そして、いろいろ調べてたくさん知ってほしいと思います。皆さんの住んでいる岡谷や諏訪は、全国的にみても、すばらしい地域です。会社も、たくさんあります。皆さんはまだ知らないかもしれませんが、そこの会社でなければできない製品を造って、トヨタやソニーなどの有名な会社に納めているような会社もたくさんあるんですよ。だから、テレビコマーシャルはしないけど、実は、その業界では有名な会社が地元とあることも知ってほしですね。今は、インターネットというとても便利なものがありますから、道を歩いていて知った会社があれば、ホームページを見てください。きっと、驚くような情報が、たくさん載っています

 ●大学・高校の就職状況

   まず、全国的な状況について、説明します。平成25年3月に卒業する大学生の就職内定率は、去年よりも、3.2ポイント増えて、63.1%となっています。2年連続で、前年を上回っていますので、会社では、採用をふやしていく方向になってきたといっていいと思います。では、高校生ではどうか?内定率は、41%で昨年よりも若干悪くなっていて、ちょっと心配ですね。

  長野県の状況では、大学生のデーターはありませんので、県内高校生の就職内定率を調べると、10月現在で、65.5%となっています。昨年よりも、-1.4ポイントで、全国の傾向と同様に、若干悪い状況ですね。高校生の求人の多いのは、製造業なのですが、皆さんも聞いたことがあると思いますが、「グローバル化」といって、生産拠点が海外に移っていますので、それが大きな原因となっていますね。

 ●個別の職種の就職状況

   最後になりますが、具体的な仕事の就職状況について、お話します。保育園などの先生、つまり保育士さんの採用状況は、どうかといいますと、結論的には、たいへん狭き門ですね。少子化といって、子どもの数が減ってきていることが大きな原因です。ただ、地域的な違いがあって、県内でも安曇野市など人口が増えている自治体では、保育園も増えて、保育士の採用も増やしているということがあります。

 福祉系の仕事では、どうか?介護福祉士とか社会福祉士とか資格が必要な仕事ですが、高校生から福祉施設に就職するよりは、進学して、国家資格の受験資格をとってからのほうが、いいと思います。

 あと、公務員の状況ですが、国家公務員と地方公務員とにわかれています。大卒と高卒では、仕事の内容が異なるので、よく調べておきましょう。大卒は、「総合職」といって、いろいろな仕事ができますが、高卒で公務員になる場合は、「事務職」に限られてしまうことが多いです。また、給料も違ってきます。岡谷市の場合は、「一般事務職」の職種では、「若干名」の採用数で、100名以上の応募があったそうです。その中には、大卒者もふくまれていて、高校生からの採用は、少ないということです。

   以上、予定の時間になりましたので、私からのお話は終わりたいと思います。今日は、進路についてお話しました。私が一番皆さんにお話したいことをもう一度まとめると、いろいろな不安があると思いますが、周囲の大人にどんどん、相談すること。そして、苦手な科目でも、最後まで粘って勉強してほしい、ということ。それから、地元の岡谷や諏訪の会社のことを、今のうちから、よく調べてほしいということ。以上です。自分の進路ですから、夢や目標をもって、最後まであきらめないで、頑張ってくださいね。(終わり)

 株式会社カシヨキャリア開発センター

常務取締役松井秀夫

※本講話は、NPO法人夢のデザイン塾副理事長・事務局長の立場で、高校生にお話させていただきました。