キャリアの隠れ家

キャリアの隠れ家

63回 吉永小百合が、女優というキャリアを選択して、今年で55年になるという。過日、最新作の舞台挨拶を行うご本人の姿を間近に見て、感慨深かった。



山形市で開かれた、吉永小百合さんの115作目の作品、「北のカナリアたち」の特別上映会に行ってきた。もちろん、ご本人の舞台挨拶目当てであることは、言うまでもない。

  私が「サユリスト」であることを知っている北海道のFB友人から、映画のホームページの存在を教えられ、そこに舞台挨拶の日程が紹介されていて、なんとか、山形市の会場に入場することができた。

  チケットは、電話などで予約することができず、直接会場にいって購入するしかなく、あきらめようと思ったが、たまたま、山形市に旧知の方がいて、その方にお願いして、入手していただいた。ありがたい。

  当日、長野からの新幹線内で、「東北新幹線が事故で運転見合わせ中」というアナウンスがながれて心配したが、幸い大した遅れもなく山形駅に到着し、車で10分ほどの旧知の方の会社にお邪魔した。彼のお父上とは、長い間、「人材事業系」の仕事でのお付き合いがあったが、3年前に亡くなられ、彼が、その会社を後継されていて、20年ぶりの再会だった。

    「松井さん、新幹線が止まっていると聞いて、心配していました。会場はこの近くですが、もう、かなり並んでいるので、早めに行かれた方がいいです」とのことで、挨拶もそこそこに、ご親切に会場までご案内いただいた。わざわざ、何回か、「偵察」に行っていただいたようだ。

  会場となる県民会館前は、確かに、すでに数百人ならんでいた。最後尾について待ち始めると、雨が落ちてきた。山登りが好きなあるFBの友人からは、「松井さんは雨男」ということになっていて、確かに、彼女とお会いする時は、雨が多いのだから、またか、と苦笑しながら待ちはじめたが、幸い、本降りにはならずに済んだ。

  待つこと1時間半ほどで、入場が始まった。「危険ですから、走るのは、おやめください」というスタッフの声など聞こえないふりで、みなさん、小走りに、ホールに入って行く。もちろん、私も、そうした。そして、まことに運がいいのか、最前列の椅子に座ることができた。舞台中央まで、4、5mほどだ。

  席を確保してから、映画のプログラムを買いに行き、戻ってきたら、お隣にいた私と同年輩のご婦人が、「もう、買われたんですか?」と、声をかけてきた。「はい、帰りは、混むでしょうから」と返すと、後ろを振り向き、手をあげて、誰かを呼んでいるようだ。近づいてきたのは、ご婦人の娘さんで、「パンフレット買ってきて」と頼んでいた。「娘と一緒にきたの。最前列は、一つしか空いていなくて、娘は、後ろなんです」と、笑った。地元の方で、東北の方言が、耳に優しく響いた。「私は、長野から来たんですよ」というと、「そうなの、追っかけね。気持ち、わかる、わかる」という。それから、開演までの30分ほど、お互いの「サユリスト」ぶりの自慢となった。

  彼女は、私より1歳上のようで、「中学生の時、米沢に、小百合さんが撮影にきて、それを見てからのファンなのよ。嫁いりの時も、ブロマイド持ってきて、部屋に飾ったわ。いまでも、何枚か飾ってあって、娘から、呆れられている」「そうでしたか。男性の俳優なら、ご主人が、ヤキモチやくところですね」「ふふふ、そうね。昔、ファンクラブあったでしょう。会報送られてきて、いまでも、とってあるのよ」「へえ、それは、すごいですね。私も、ファンクラブに入っていましたが、そこまでは、、、」

  矢沢永吉のファン同士もそうだが、同じ思いを共有する人との出会いは、なぜか、お互いの、センチメントな感情を抱きしめたくなり、優しくなれる。彼女は、後ろを振り向きながら、「昨日まで、テレビで、上映会のCMがたくさん流れていて、チケット余っているのかと心配していたら、もう満席ね」と、笑った。私も、その言葉につられるように、後ろを向くと、確かに、最後列まで、ぎっしり、ほぼ満席だ。

  女性7割、男性3割と言ったところか。着物で着飾ったご婦人も目立つ。そして、いよいよ、舞台に司会者が登場して、開演のアナウンスがはじまった。(続く)

平成24年11月9日

株式会社カシヨキャリア開発センター

常務取締役 松井秀夫