キャリアの隠れ家

キャリアの隠れ家

第71回 母親の七回忌の法事の後、山ノ内町の古い湯治場角間温泉で、温泉に癒され美味しいと料理を堪能した。兄妹たちが集うこんな機会は、亡き母親からの贈り物だ。

長野電鉄名物特別急行「スノーモンキー号」



 私にとって、春の訪れは、母親の命日と共にやってくる。今年は、ちょうど7回忌に当たり、3月の第一週の土曜日、兄妹とその家族だけのささやかな法事を行った。

 妹二人は、大阪と東京から、それぞれの連れあいと来てくれたので、お寺での法事が終わり、近くの温泉でゆっくりしてもらうつもりで宿を探したが、たまたま、「ながの情報」でたいへんお世話になっている、山ノ内町角間温泉の「Four Seasons SPA宝泉」に、予約をした。

 長野県を代表する温泉地の一つでもある山ノ内町には、渋温泉、上林温泉、熊の湯などの源泉が幾つもあり、志賀高原の入り口にもあたり、昔から、県内外の観光客で賑わっていた。この角間温泉も、その一つで、小さい頃、両親に連れて行ってもらった思い出がある。長野駅から長野電鉄にのり終着駅の湯田中駅で降りて、タクシーで、10分ほど。山あいに、5、6軒の旅館が点在する古い湯治場だ。

  あらためてウエブで調べてみると、なんと、室町時代に蓮如上人が発見したという縁起を持つ。我が家のお寺は浄土真宗なので、これも、何かのご縁なのかもしれないが、林芙美子や吉川英治や横山大観など、早々たる文豪、画家も、訪れていたという。

 「 宝泉の湯」ともいうこのお宿は、2007年に新しいオーナーの手によって新築されたそうで、まだ新しさが香る木造の建物であった。最初は、日帰りの入浴施設として開業したようだが、もちろん、宿泊もできる。

  源泉の温度は90度近くあるが、宿まで引いてくる間に42、3度になるという。従って、一切足し水をしていない100%源泉、掛け流しの贅沢な温泉だ。透明で濁りのない綺麗な泉質はナトリウム系で、肌が若返るという「美人の湯」でもあると聞いて、歳相応に年老いてきた妹たちへのプレゼントにもなると思ったのだが、さてさて、一度だけでは、効果が期待できないほどに、老いてきた。。。

   お風呂は、熱くなくぬるくもなく、誠に心地よい湯上りの気分であった。妹たちの二人の連れあいと一緒に入ったが、いずれも、かなりの温泉好きであるが、いたく、満足したようだ。

  温泉をゆっくり堪能した後は、冷たいビールと食事が楽しみである。少し高台に位置する宿の食事処からは、志賀高原に通じる「オリンピック道路」を行き交う車のライトや、渋温泉方面の夜景が綺麗に臨める。「とりあえず、ビール」と頼んでしばし、キンキンに冷やされたグラスに入ったビールが運ばれてきた。女性陣はカクテルで、みんなで乾杯。

  料理は、お洒落なイタリアン風のモダンなコースで、東京で修業された料理人さんが作っているという。お洒落な器に盛られた前菜の後、お鍋は地鶏のシチュー。サラダは、サラダほうれん草がたっぷりのシーザーサラダなど、定番メニューの多い温泉宿と違い、意表を突くコースで、とても美味しく、満足した。

  翌朝も朝風呂を楽しみ、朝食も、温泉宿おきまりの「卵焼きと焼き海苔」と一味違う、一手間かかった料理をいただくことができた。

  大阪と東京へ帰る妹夫婦たちと一緒に、長野電鉄の特別急行「スノーモンキー号」で、長野駅まで1時間ほどの電車の旅も満喫した。妹が持っていたアメリカ産というのミカンの硬い皮を剥きながら、「これで、ゆで卵があれば、子どものころの修学旅行ね」と、みんなで笑いあった。

  法事でお経をお聞きしているなか、途中でご住職が立ち上がり、御本尊の前にある大きな白い蝋燭を、赤い蝋燭にお変えになった。これは、7回忌を契機に、これからは、お祝いの気持ちで故人を偲ぶための意味があると、後の「おとき」でお伺いした。

  さて、5年後の13回忌は、70歳近くになる私と女房や子供たち、孫たち、そして妹たちの家族みんなが、元気な笑顔で故人を偲ぶお祝いの再会となることを祈ろう。

 平成25年3月9日

株式会社カシヨキャリア開発センター

常務取締役 松井秀夫