キャリアの隠れ家

キャリアの隠れ家

43回 何時の時代でも、タイムマネジメントは、新人教育の基本だ。ライアル・ワトソンの至言、もう一度、若者たちに伝えたい。

 

            

私からK君へ

今日は、最近気になっていることを話そう。どうも、君の内なる時間の流れが、会社のそれと、大きなずれがあるような気がする。会社には、会社の時間の流れがある。あえて嫌味な言い方をすれば、限られた時間内に、生み出さなければならない利益を源にした流れだ。社員にタイムスケジュールは、これをすべての大きな軸として、組み立てられなければならない。だから、同じ1時間でも、学生時代の1時間と現在の1時間とは、その内包する価値に、大きな違いがある。そして、何よりも言いたいことは、その1時間のうちに、これからの君の人生を決定づけて行く、多くの選択と決断とが、絶え間無く、君に襲いかかってきているというこだ。それに対して、現在の君の状態では、的確に、迅速にそれらに対応していくことは、できないだろうと思う。

そのことに、早く、気づいてほしい。一日でも早く、会社が刻み続けている時間の奔流を見極めて、そのスピードとリズムを、君自身の心と体に、しっかりと刻み込んで行く必要がある。そして、大小の様々な選択と決断に、果敢な挑戦を繰り返してほしい。1時間あるいは1日のうちに積み重ねられるほんの小さな取捨選択とでも呼ぶべきものが、君の仕事のスタイルを決定づけ、今後の仕事の方向や大いなる人生を形づくっていくことになるのだから。

最後に、君の好きなライアル・ワトソンのこんな言葉を贈ろう。「今より後ろに時間はない。すべての時間は、これからであり、その時間は、私たちに絶えず発信している。その発信をとらえられる人ととらえられない人とがいる。未来からの時間のメッセージを読み取ることができず、とらえられない人は、その時が来てはじめて理解する」

(追伸)もっと早く気がつけばよかったのだけれど、君に、システムノートと『Aタイム』という本をお貸ししよう。半年程使ったノートだけれど、今の君には、とても役に立つと思う。『Aタイム』は、時間管理の大切さを教えてくれる世界的ベストセラーだ。

K君から私へ

どうも私には、時間という観念がないようです。デッドラインのことよりも、如何に現状を説明するか、既知の情報を組み合わせて新しい意味を提供することに興味があるようです。言い換えれば、興味本位でしか、仕事をしていないことになります。

「Aタイム」を読んで、これからの時間管理がいかに大切になるかもわかりました。ただ、ここで、優等生的に、「わかりまた、反省します」と言っても実は、私は何も反省していないし、仕事への態度も変わらないことを暗に示しているに過ぎません。(これは、いわゆる新人類と言われている私たちに対して、そうでない大人が、「新人類は返事はいいが、それは返事だけだ」と言っていることに対する対応です。)やはり、時間という概念は、ミヒャエル・エンデの「モモ」にでてくる、時間を管理し、人間を管理しようとする「暗きものども」というイメージが強過ぎるようです。

私が仕事について、本当に、「ああ、そうだったのか」と思ったことを書きます。それは『Aタイム』のことではなく、井上優氏の『ライフスタイルマーチャンダイジング』のことです。人々に生きがいを見つけ、その生きがいからライフスタイルを発見し、そのライフスタイルにマッチした
商品開発を、そのライフスタイルと一緒に販売する、という考え方は、素直に頷けるものがあります。

今回は、決してMさんの問いに対する答えにはなっていませんでした。とても答えられないというのが、正直な気持ちです。

平成23年8月